大阪府立港南造形高等学校 いじめ防止基本方針
大阪府立港南造形高等学校
令和7年4月1日改訂
第1章 いじめ防止に関する本校の考え方
1 基本理念
いじめは、その子どもの将来にわたって内面を深く傷つけるものであり、子どもの健全な成長に影響を及ぼす、まさに人権に関わる重大な問題である。全教職員が、いじめはもちろん、いじめをはやし立てたり、傍観したりする行為も絶対に許さない姿勢で、どんな些細なことでも必ず親身になって相談に応じることが大切である。そのことが、いじめ事象の発生・深刻化を防ぎ、いじめを許さない児童生徒の意識を育成することになる。
そのためには、学校として教育活動の全てにおいて生命や人権を大切にする精神を貫くことや、教職員自身が、児童生徒を一人ひとり多様な個性を持つかけがえのない存在として尊重し、児童生徒の人格のすこやかな発達を支援するという児童生徒観、指導観に立ち指導を徹底することが重要となる。
本校では、「互いに違いを認め合い、ともに学び、ともに生きる」を教育目標としており、そのために人権教育に重点をおいて取り組んでいる。いじめは重大な人権侵害事象であるという認識のもとに、ここに学校いじめ防止基本方針を定める。
2 いじめの定義
「いじめ」とは、児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等、当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう。
具体的ないじめの態様は,以下のようなものがある。
➢冷やかしやからかい,悪口や脅し文句,嫌なことを言われる
➢仲間はずれ,集団による無視をされる
➢軽くぶつかられたり,遊ぶふりをして叩かれたり,蹴られたりする
➢ひどくぶつかられたり,叩かれたり,蹴られたりする
➢金品をたかられる
➢金品を隠されたり,盗まれたり,壊されたり,捨てられたりする
➢嫌なことや恥ずかしいこと,危険なことをされたり,させられたりする
➢パソコンや携帯電話等で,誹謗中傷や嫌なことをされる 等
3 いじめ防止のための組織
組織を置くことで、いじめについては、特定の教職員で問題を抱え込まず学校が組織的に対応することにより、複数の目による状況の見立てが可能となる。また、スクールカウンセラー等の活用により、より実効的ないじめの問題の解決を図る。
(1) 名 称
「いじめ対策委員会」
(2) 構成員
校長、教頭、首席、生徒指導主事、各学年主任、養護教諭、保健部教育相談係、支援教育コーディネーター、人権教育推進委員長、その他関係教職員
(3)役 割
ア 未然防止
○ いじめの未然防止のため、いじめが起きにくい・いじめを許さない環境づくりを行う役割
イ 早期発見・事案対処
○ いじめの早期発見のため、いじめの相談・通報を受け付ける窓口としての役割
○ いじめの早期発見・事案対処のため、いじめの疑いに関する情報や児童生徒の問題行動などに係る情報の収集と記録、共有を行う役割
○ いじめに係る情報(いじめが疑われる情報や児童生徒間の人間関係に関する悩みを含む。)があった時には緊急会議を開催するなど情報の迅速な共有、及び関係児童生徒に対するアンケート調査、聴き取り調査等により事実関係の把握といじめであるか否かの判断を行う役割
○ いじめの被害児童生徒に対する支援・加害児童生徒に対する指導の体制・対応方針の決定と保護者との連携といった対応を組織的に実施する役割
ウ 学校いじめ防止基本方針に基づく各種取組み
○ 学校いじめ防止基本方針に基づく取組みの実施や具体的な年間計画の作成・実行・検証・修正を行う役割
○ 学校いじめ防止基本方針における年間計画に基づき、いじめの防止等に係る校内研修を企画し、計画的に実施する役割
○ 学校いじめ防止基本方針が当該学校の実情に即して適切に機能しているかについての点検を行い、学校いじめ防止基本方針の見直しを行う役割
(PDCAサイクルの実行を含む。)
4 年間計画
本基本方針に沿って、以下のとおり実施する。
大阪府立港南造形高等学校 いじめ防止年間計画 |
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1年 | 2年 | 3年 | 学校全体 | |
4
月 |
学校いじめ防止基本方針の内容を生徒、保護者へ周知
高校生活支援カードによって把握された生徒状況の集約 |
学校いじめ防止基本方針の内容を生徒、保護者へ周知
人権HR (いじめを考える) |
学校いじめ防止基本方針の内容を生徒、保護者へ周知
人権HR (いじめをなくすために) |
第1回 いじめ対策委員会(年間計画の確認、問題行動調査結果を共有)
「学校いじめ防止基本方針」のHP更新 |
5
月 |
校外学習 | 校外学習 | 校外学習 | PTA総会等において「学校いじめ防止基本方針」趣旨説明 |
6
月 |
保護者懇談週間
(家庭での様子の把握) |
保護者懇談週間
(家庭での様子の把握) |
保護者懇談週間
(家庭での様子の把握) |
第2回委員会(いじめ等アンケートの確認) |
7
月 |
いじめ等アンケート
実施
|
いじめ等アンケート
実施
|
いじめ等アンケート
実施
|
第3回委員会
(いじめ等アンケートの進捗確認) |
8
月 |
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9
月 |
文化祭 | 文化祭 | 文化祭 | 上半期のいじめ状況調査 |
10
月 |
いじめ等アンケート
実施 |
いじめ等アンケート
実施 |
いじめ等アンケート
実施 |
第4回委員会(状況報告と取組みの検証) |
11
月 |
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12
月 |
保護者懇談週間
(家庭での様子の把握)
いじめ等アンケート実施 |
保護者懇談週間
(家庭での様子の把握)
いじめ等アンケート実施 |
保護者懇談週間
(家庭での様子の把握)
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第5回委員会(いじめ等アンケートの確認・進捗確認)
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1
月 |
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2
月 |
港南展(卒業制作展)
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第6回委員会(年間の取組みの検証) | ||
3
月 |
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5 取組み状況の把握と検証(PDCA)
いじめ防止等の取組みの実施状況を学校評価の評価項目に位置付けるとともに、いじめ対策委員会を、(各学期の終わりに、など)年6回、開催し、取組みが計画どおりに進んでいるか、いじめの対処がうまくいかなかったケースの検証、必要に応じた学校基本方針や計画の見直しなどを行う。
第2章 いじめ防止
1 基本的な考え方
いじめの未然防止にあたっては、教育・学習の場である学校・学級自体が、人権尊重が徹底し、人権尊重の精神がみなぎっている環境であることが求められる。そのことを基盤として、人権に関する知的理解及び人権感覚を育む学習活動を各教科、(道徳)、特別活動、総合的な探究の時間のそれぞれの特質に応じ、総合的に推進する必要がある。
特に、児童生徒が、他者の痛みや感情を共感的に受容するための想像力や感受性を身につけ、対等で豊かな人間関係を築くための具体的なプログラムを作成する必要がある。そして、その取組の中で、当事者同士の信頼ある人間関係づくりや人権を尊重した集団としての質を高めていくことが必要である。
2 いじめの防止のための措置
- 平素からいじめについての共通理解を図るため、いじめの態様や特質、原因・背景、具体的な指導上の留意点などについて校内研修や職員会議で周知を図っていくことが大切である。また、生徒に対しても、全校集会や学級活動(ホームルーム活動)などで校長や教職員が、日常的にいじめの問題について触れ、「いじめは人として絶対に許されない」との雰囲気を学校全体に醸成していくことが大切である。常日頃から、生徒と教職員が「いじめとは何か」について具体的な認識を共有する手段として、何がいじめなのかを具体的に列挙して分かりやすい場所に掲示するなどが考えられる。教職員に対して は職員研修やワークショップ等を企画し、いじめに対する 見識を深めるとともに、共有化を図る。
- いじめに向かわない態度・能力を育成するために、学校の教育活動全体を通じた道徳教育や人権教育の充実、読書活動・体験活動などの推進により、生徒の社会性を育むとともに、幅広い社会体験・生活体験の機会を設け、他人の気持ちを共感的に理解できる豊かな情操を培い、自分の存在と他人の存在を等しく認め、お互いの人格を尊重する態度を養う。また、自他の意見の相違があっても、互いを認め合いながら建設的に調整し解決していける力や、自分の言動が相手や周りにどのような影響を与えるかを判断して行動できる力など,生徒が円滑に他者とコミュニケーションを図る能力を育てる。
- いじめが生まれる背景を踏まえ、指導上の注意としては、いじめ加害の背景には、勉強や人間関係等のストレスが関わっていることを踏まえ、授業についていけない焦りや劣等感などが過度なストレスとならないよう一人一人を大切にした分かりやすい授業づくりを進めていくこと、学級や学年、部活動等の人間関係を把握して一人一人が活躍できる集団づくりを進めていくことが求められる。また、ストレスを感じた場合でもそれを他人にぶつけるのではなく、運動・スポーツや読書、制作などで発散したり、誰かに相談したりするなど、ストレスに適切に対処できる力を育むことも大切である。なお、教職員の不適切な認識や言動が生徒を傷つけたり、他の生徒によるいじめを助長したりすることのないよう指導の在り方には細心の注意を払う。教職員による「いじめられる側にも問題がある」という認識や発言は、いじめている生徒や、周りで見ていたり、はやし立てたりしている生徒を容認するものに他ならず、いじめられている生徒を孤立させ、いじめを深刻化する。また、障がい(発達障がいを含む)について適切に理解した上で、生徒に対する指導に当たる必要がある。
- 自己有用感や自己肯定感を育み、ねたみや嫉妬などいじめにつながりやすい感情を減らす取組みとして、全ての生徒が「認められている」「満たされている」という思いを抱くことができるよう、学校の教育活動全体を通じ、生徒が活躍でき、他者の役に立っていると感じ取ることのできる機会を全生徒に提供する。その際、当該学校の教職員はもとより、家庭や地域の人々などにも協力を求めていくことで、幅広い大人から認められているという思いが得られるよう工夫することも有効である。また、自己肯定感を高められるよう、困難な状況を乗り越えるような体験の機会などを積極的に設けることも考えられる。なお、社会性や自己有用感・自己肯定感などは、発達段階に応じて身に付いていくものであることを踏まえ、異校種や高等学校間で適切に連携して取り組むことが考えられる。幅広く長く多様な眼差しで生徒を見守ることができるだけでなく、生徒自らも長い見通しの中で自己の成長発達を感じ取り、自らを高めることができる。
- 生徒が自らいじめについて学び、取り組む方法として、生徒が自らいじめについて学び、取り組む方法として、そうした問題を生徒自身が主体的に考え生徒自身がいじめの防止を訴えるような取組みを推進(生徒会によるいじめ撲滅の宣言やポスターによる抑止など)する。例えば、「いじめられる側にも問題がある」「大人に言いつけることは卑怯である」「いじめを見ているだけなら問題はない」などの考え方は誤りであることを学ぶ。あるいはささいな嫌がらせや意地悪であっても、しつこく繰り返したり、みんなで行ったりすることは、深刻な精神的危害になることなどを学ぶ。なお、生徒会等でいじめの防止に取り組むことは推奨されることであるが、熱心さのあまり教職員主導で生徒が「やらされている」だけの活動に陥ったり、一部の役員等だけが行う活動に陥ったりする例もある。教職員は,全ての生徒がその意義を理解し主体的に参加できる活動になっているかどうかをチェックするとともに、教職員は陰で支える役割に徹するよう心がける。
第3章 早期発見
1 基本的な考え方
いじめの特性として、いじめにあっている児童生徒がいじめを認めることを恥ずかしいと考えたり、いじめの拡大を恐れたりするあまり訴えることができないことが多い。また、自分の思いをうまく伝えたり、訴えたりすることが難しいなどの状況にある児童生徒が、いじめにあっている場合は、隠匿性が高くなり、いじめが長期化、深刻化することがある。
それゆえ、教職員には、何気ない言動の中に心の訴えを感じ取る鋭い感性、隠れているいじめの構図に気づく深い洞察力、よりよい集団にしていこうとする熱い行動力が求められている。
2 いじめの早期発見のための措置
- 実態把握の方法として、定期的なアンケート調査(いじめに関するアンケートや、アンケート「安全で安心な学校を過ごすために」の年2回の実施、定期的な教育相談の実施等によりいじめの実態把握に取り組むとともに、生徒が日頃からいじめを訴えやすい雰囲気をつくる必要がある。定期的なアンケートや教育相談以外にも、いじめの早期発見の手立てとして、休み時間や放課後の雑談の中などで生徒の様子に目を配り、教職員と生徒の間で日常行われている日誌等を活用し交友関係や悩みを把握したり個人面談や家庭訪問の機会を活用したりすることなどが考えられる。なお、これらにより集まったいじめに関する情報についても学校の教職員全体で共有することが必要である。
- 保護者と連携して生徒を見守り、健やかな成長を支援していくことも有効である。
- 生徒、その保護者、教職員が、抵抗なくいじめに関して相談できる体制を整備するとともに、生徒や保護者の悩みを積極的に受け止められているか、適切に機能しているかなど、定期的に体制を点検すること、保健室の利用、電話相談窓口について広く周知することが必要である。
- アンケートの内容や、配付するプリント、人権ホームルームなどにより、相談体制を広く周知する。また、アンケートの結果や、定期的ないじめ対策委員会を通して、適切に機能しているかなど、定期的に体制を点検する。
- 教育相談等で得た生徒の個人情報については、対外的な取扱いの方針を明確にし適切に扱う。
第4章 いじめに対する考え方
1 基本的な考え方
いじめにあった生徒のケアが最も重要であるのは当然であるが、いじめ行為に及んだ生徒の原因・背景を把握し指導に当たることが、再発防止に大切なことである。近年の事象を見るとき、いじめた生徒自身が深刻な課題を有している場合が多く、相手の痛みを感じたり、行為の悪質さを自覚したりすることが困難な状況にある場合がある。よって、いじめた当事者が自分の行為の重大さを認識し、心から悔い、相手に謝罪する気持ちに至るような継続的な指導が必要である。いじめを受けた当事者は、仲間からの励ましや教職員や保護者等の支援、そして何より相手の自己変革する姿に、人間的信頼回復のきっかけをつかむことができると考える。
そのような、事象に関係した生徒同士が、豊かな人間関係の再構築をする営みを通じて、事象の教訓化を行い教育課題へと高めることが大切である。
具体的な生徒や保護者への対応については、(別添)「5つのレベルに応じた問題行動への対応チャート」を参考にして、外部機関とも連携する。
2 いじめ発見・通報を受けたときの対応
- いじめの疑いがある場合、ささいな兆候であっても、いじめの疑いがある行為には、早い段階から的確に関わる。
遊びや悪ふざけなど、いじめと疑われる行為を発見した場合、その場でその行為を止めたり、生徒や保護者から「いじめではないか」との相談や訴えがあったりした場合には、真摯に傾聴する。
その際、いじめられた生徒やいじめを知らせてきた生徒の安全を確保するよう配慮する。 - 教職員は一人で抱え込まず、速やかに学年主任や分掌長等に報告し、いじめの防止等の対策のための組織(いじめ対策委員会)と情報を共有する。その後は、当該組織が中心となって、速やかに関係生徒から事情を聴き取るなどして、いじめの事実の有無の確認を行う。
- 事実確認の結果、いじめが認知された場合、管理職が教育委員会に報告し、相談する。
- 被害・加害の保護者への連絡については、家庭訪問等により直接会って、より丁寧に行う。
- いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものと認められるときは、いじめられている生徒を徹底して守り通すという観点から、所轄警察署と相談し、対応方針を検討する。なお、生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、直ちに所轄警察署に通報し、適切に援助を求める。
3 いじめられた生徒又はその保護者への支援
いじめられた生徒が落ち着いて教育を受けられる環境を確保し、いじめられた生徒に寄り添い支える体制をつくる。その際、いじめられた生徒にとって信頼できる人(親しい友人や教職員、家族、地域の人等)と連携し、いじめ対策委員会が中心となって対応する。状況に応じて、スクールカウンセラーの協力を得て対応を行う。
4 いじめた生徒への指導又はその保護者への助言
- 速やかにいじめを止めさせた上で、いじめたとされる生徒からも事実関係の聴取を行う。
いじめに関わったとされる生徒からの聴取にあたっては、個別に行うなどの配慮をする。 - 事実関係を聴取した後は、迅速にいじめた生徒の保護者と連携し、協力を求めるとともに、継続的な助言を行う。
- いじめた生徒への指導に当たっては、家庭訪問や別室指導等個別に指導する機会を設け、いじめは人格を傷つけ、生命、身体又は財産を脅かす行為であることを理解させ、自らの行為の責任を自覚させる。なお、いじめた生徒が抱える問題など、いじめの背景にも目を向け、当該生徒の安心・安全、健全な人格の発達に配慮する。その指導にあたり、学校は、複数の教職員が連携し、必要に応じてスクールカウンセラーの協力を得て、組織的に、いじめをやめさせ、その再発を防止する措置をとる。
5 いじめが起きた集団への働きかけ
- いじめを見ていたり、同調していたりした生徒に対しても、自分の問題として捉えさせる。
そのため、まず、いじめに関わった生徒に対しては、正確に事実を確認するとともに、いじめを受けた者の立場になって、そのつらさや悔しさについて考えさせ、相手の心の悩みへの共感性を育てることを通じて、行動の変容につなげる。
また、同調していたりはやし立てたりしていた「観衆」、見て見ぬふりをしていた「傍観者」として行動していた生徒に対しても、そうした行為がいじめを受けている生徒にとっては、いじめによる苦痛だけでなく、孤独感・孤立感を強める存在であることを理解させるようにする。
「観衆」や「傍観者」の生徒は、いつ自分が被害を受けるかもしれないという不安を持っていることが考えられることから、すべての教職員が「いじめは絶対に許さない」「いじめを見聞きしたら、必ず先生に知らせることがいじめをなくすことにつながる」ということを生徒に徹底して伝える。 - いじめが認知された際、被害・加害の生徒たちだけの問題とせず、学校の課題として解決を図る。全ての生徒が、互いを尊重し、認め合う集団づくりを進めるため、担任が中心となって生徒一人ひとりの大切さを自覚して学級経営するとともに、すべての教職員が支援し、生徒が他者と関わる中で、自らのよさを発揮しながら学校生活を安心してすごせるよう努める。そのため、認知されたいじめ事象について地域や家庭等の背景を理解し、学校における人権教育の課題とつなげることにより教訓化するとともに、いじめに関わった生徒の指導を通して、その背景や課題を分析し、これまでの生徒への対応のあり方を見直す。その上で、人権尊重の観点に立ち、授業や学級活動を活用し、生徒のエンパワメントを図る。その際、スクールカウンセラーとも連携する。体育祭や文化祭、校外学習等は児童生徒が、人間関係づくりを学ぶ絶好の機会ととらえ、生徒が、意見が異なる他者とも良好な人間関係を作っていくことができるよう適切に支援する。
6 ネット上のいじめへの対応
- ネット上の不適切な書き込み等があった場合、まず学校として、問題の箇所を確認し、その箇所を印刷・保存するとともに、いじめ対策委員会において対応を協議し、関係生徒からの聞き取り等の調査、生徒が被害にあった場合のケア等必要な措置を講ずる。
- 書き込みへの対応については、削除要請等、被害にあった生徒の意向を尊重するとともに、当該生徒・保護者の精神的ケアに努める。また、書き込みの削除や書き込んだ者への対応については、必要に応じて、大阪法務局人権擁護部や所轄警察署等、外部機関と連携して対応する。
- また、情報モラル教育を進めるため、教科「情報」において、「情報の受け手」として必要な基本的技能の学習や「情報の発信者」として必要な知識・能力を学習する機会を設ける。
7 いじめ解消の定義
いじめが「解消している」状態については、少なくとも次の2つの要件が満たされている必要がある。
(1)いじめに係る行為が止んでいること
被害者に対する心理的又は物理的な影響を与える行為が止んでいる状態が相当の期間継続していること。(相当の期間:少なくとも3か月を目安)
(2)被害生徒が心身の苦痛を感じていないこと
被害生徒本人及びその保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。
また、上記のいじめが「解消している」状態とは、あくまで、一つの段階に過ぎず、「解消している」状態に至った場合でも、いじめが再発する可能性が十分にあり得ることを踏まえ、教職員は、当該いじめの被害生徒及び加害生徒については、日常的に注意深く観察を行う。
第5章 その他
1 組織的な指導体制
いじめへの対応は、校長を中心に全教職員が一致協力体制を確立することが重要である。一部の教職員や特定の教職員が抱え込むのではなく、「いじめ対策委員会」で情報を共有し、いち早く全職員が情報を共有することが大切である。また、平素からこれらの対応の在り方について、全ての教職員で共通理解を図り、いじめの問題等に関する指導事例の記録やその保存・管理は委員会で行い、生徒の進学・進級や転学の際、適切に引き継いだり情報提供したりできる体制をとれるように心がける。また、必要に応じて心理や福祉の専門家、弁護士、医師、教員・警察官経験者など外部専門家等が参加しながら対応することにより、より実効的ないじめの問題の解決に資することが期待される。
2 校内研修の充実
全ての教職員の共通認識を図るため、少なくとも年に一回以上、いじめを始めとする生徒指導上の諸問題等に関する校内研修を行う。教職員の異動等によって、教職員間の共通認識が形骸化してしまわないためにも、年間計画に位置づけた校内研修の実施が望まれる。
3 校務の効率化
教職員が生徒と向き合い、いじめの防止等に適切に取り組んでいくことができるようにするため、学校の管理職は、一部の教職員に過重な負担がかからないように校務分掌を適正化し、組織的体制を整えるなど校務の効率化を図る。
4 学校評価と教員評価
学校評価において、いじめの問題を取り扱うに当たっては、学校評価の目的を踏まえて行うことが求められる。この際、いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、問題を隠さず、いじめの実態把握や対応が促されるよう生徒や地域の状況を十分踏まえた目標の設定や目標に対する具体的な取組み状況や達成状況を評価し、学校は評価結果を踏まえてその改善に取り組む。教員評価において、いじめの問題を取り扱うに当たっては、いじめの問題に関する目標設定や目標への対応状況を評価するのであって、いじめの有無やその多寡のみを評価してはいけない。「日頃からの生徒理解」「未然防止や早期発見」「いじめが発生した際の問題を隠さず迅速かつ適切な対応」「組織的な取組み」等の項目が評価されるよう留意する。
5 地域や家庭との連携
学校基本方針等について地域や保護者の理解を得ることで、地域や家庭に対して、いじめの問題の重要性の認識を広めるとともに、家庭訪問や学校通信などを通じて家庭との緊密な連携協力を図る。例えば、学校、PTA、地域の関係団体等がいじめの問題について協議する機会を設けたり、学校協議会を活用したりするなど地域と連携した対策を推進する。より多くの大人が子どもの悩みや相談を受け止めることができるようにするため、学校と家庭、地域が組織的に連携・協働する体制を構築する。